仙台高等裁判所 平成4年(ラ)58号 決定 1992年5月27日
抗告人
佐々木一重
右代理人弁護士
織田信夫
相手方
菅原正幸
主文
一 原決定を次のとおり変更する。
二 抗告人は本件決定の送達を受けた日から一週間以内に金一〇〇万円の現金を供託せよ。
理由
一抗告人の抗告の趣旨及び理由は別紙即時抗告状写し記載のとおりである。
二一件記録によると、抗告人の本件仮処分命令申請は別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)に対する所有権移転登記請求権を被保全権利とするものであるところ、ところ、①その被保全権利として主張するところは、本件土地は、抗告人の父佐々木三治に対して農地法一六条により売り渡されたものであるのに相手方の曾祖父菅原幸吉に右売渡を原因とする所有権移転登記が経由された、仮に受渡しが佐々木三治になされなかったとしても同人は同土地を時効取得をし抗告人はその権利を承継取得した、かつ、相手方は、本件土地について昭和三三年九月九日相続を原因として登記を経由した菅原幸吉の子であり相手方の父である菅原幸喜から平成三年二月二六日に同月一九日売買を原因として所有権移転登記を経由したが、右売買は抗告人の菅原幸喜に対する所有権移転登記請求権の行使を回避するためになされた通謀虚偽表示であるというものであり、②保全の必要性として主張するところは、相手方は抗告人の正当な権利の行使を妨げる可能性があることと認められる。右抗告人の主張のうち、一件記録によると、少なくとも時効取得に関する相手方に対する請求及び保全の必要性については一応の疎明があり、本件土地の固定資産税消費額は一二六万二二八〇円であると認められること、かつ、仮処分命令申請の内容が処分禁止を求めるものであり、相手方の被ることがあると考えられる損害の程度はそれほど大きいとは考えられないことをも考慮すると、本件仮処分らついて立保証額としては一〇〇万円とするのが相当である。
したがって、右立保証額を二〇〇万円とした原決定は違法であり取消を免れない。
三よって、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官豊島利夫 裁判官田口祐三 裁判官菅原崇)
別紙物件目録
所在 古川市渋井字西田
地番 四〇八番
地目 宅地
地積 588.76平方メートル
別紙仮処分命令申立の一部却下決定に対する即時抗告状
抗告の趣旨
一、原決定を取り消しさらに相当の裁判を求める。
抗告の理由
一、仮処分命令の発布または執行の条件として担保を立てさせる趣旨は、保全命令によって債務者が被ることの予想される損害を担保させようとするところにある。
二、本件の仮処分の目的物は、評価証明書より明らかなように、固定資産評価額が一二六万二、二八〇円であり、時価額としてもその三倍程度のものである。その地上には債務者所有建物が長年に亘って存するものであり、右土地につき本案の第一審判決まで処分が禁止されたところで二〇〇万円もの損害の発生が予想されるとは到底考えられない。
三、従来の担保の基準からすれば時価額の一〇分の一程度であり、原審の担保額は不当に高額である。
四、不相当に高額な立担保命令は、必ずしも裕福ではない国民の裁判を受ける権利を侵害するものであり取り消されるべきものである。
五、よって抗告の趣旨記載の裁判を求める。